
福岡県粕屋町のシティプロモーションとして制作され、YouTubeで4万回以上の再生を記録した動画「赤ちゃん泣き止む!?『かすたまちゃん』」。令和8年全国広報コンクールでは見事「総務大臣賞(映像)」を受賞、第8回日本観光国際映画祭では入選を果たし、大きな話題を呼んでいます。
「子育て世代へのアプローチ」という自治体の課題に対し、「泣きやませ動画」という異例の提案はどのようにして生まれ、実現したのか?プロジェクトを牽引した株式会社西日本新聞メディアラボ ビジネスプロデュース部の堀田さんに、企画の裏側を新入社員3名が聞きました。
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—まずは、本プロジェクトの背景について教えてください。
堀田:本案件は、粕屋町役場の市制対策室(総務部総合政策課)と連携し、子育て世代に向けた街の魅力発信を目的としたシティプロモーション事業の一環として実施しました。
実は、粕屋町様のプロジェクトは2023年の粕屋町の「若者向け魅力発信事業」が最初のきっかけです。粕屋町は自然が豊かで、博多や天神など福岡市にも近く非常にアクセスが良い住みやすい町です。人口が約4万8000人で、5万人を超えると「市」になれるという背景があるのですが、進学などで若者が町外へ流出してしまうという課題がありました。
そのため、関係人口を増やす目的で、移住メディアへの広告やインフルエンサーの起用、ショートドラマの制作などを行いました。その結果が好評で、次年度(2024年)も引き続きメディアラボに提案の依頼をいただきました。
—そこから、今回はなぜ「子育て世代」にターゲットが変わったのでしょうか?
堀田: 前年のショートドラマが非常に好評で、「次年度もぜひ提案してほしい」とお声がけをいただきました。そこで、「住み続けてもらう」「引っ越してきてもらう」という最終的なゴールを考えた時、より具体的なアプローチとして「子育て世代(ファミリー層)」に向けた定住促進にフォーカスすることになりました。
「泣きやませ動画」のアイデアは、自身のリアルな子育て体験から

—非常にユニークな「赤ちゃんが泣き止む動画」というアイデアは、どのように生まれたのですか?
堀田: 監督から「キャラクターを作ろう」という提案がありました。ただ、普通に「博多まで10分」「インターが近い」「駅が6つある」といった粕屋町の魅力を羅列するだけの動画では、SNSで発信してもなかなか見てもらえませんし、記憶にも残りません。
そのため、耳に残りやすいよう赤ちゃんが泣き止む動画・歌の要素を取り入れようと考えました。当時、私の子供が生まれたばかりで、泣き止ませるために動画を見せていたことがヒントになりました。 その歌の中に「インターチェンジから近い」「自然がいっぱいある」といった粕屋町の魅力をリズムよく詰め込みました。
—実際、動画には「赤ちゃんラボ5.0」という専門機関も関わっていますね。
堀田: はい。東京大学の開教授が代表理事を務める「赤ちゃんラボ5.0」に連携をとり実現しました。赤ちゃんによって個性があるので「絶対に泣き止む」とは断定できないそうですが、「声の違いやリズムの変化など、いいリズムの要素が詰まっている」とお墨付きをいただきました。
—キャラクターの「かすたまちゃん」はどのような思いでデザインされたのでしょうか?
堀田: 最初は駕与丁公園にいる亀をモチーフにする案などもあったのですが、最終的に「子育てしやすい町の象徴」として「卵」をコンセプトにしました。「子どもが生まれた」「家を買った」といった、何かが始まるドキドキ・ワクワク感を卵の形に込めています。デザインは人気イラストレーターのPirakoさんにお願いしました。
—大成功のプロジェクトですね。最後に、今後の展望を教えてください。
堀田: 今回の案件のように、ただ言われたものを作るのではなく、クライアントの課題を深掘りし、クリエイターの武器(キャラクターや歌、ショートドラマなど)を掛け合わせて最適な企画を提案するのがプロデューサーの仕事です。現在も、人形師の方に依頼し着ぐるみを作りイベントを行ったり、グッズ開発も進めたりと、毎年プロジェクトが拡大しています。
【このインタビューを通じて】
堀田さんご自身のリアルな育児体験からひらめいたアイデアが、泣き止ませ動画という形で実現し、それが“関係人口創出”という社会課題の解決につながっていることに、とても感銘を受けました。このように、自由に自分のアイデアを形にできる環境は、メディアラボでこそ実現できることだと思います。
